【特別インタビュー】どの銘柄を選ぶかということより自分の投資スタンスに応じた“必勝パターン”を見つけることが重要

投稿:2015/06/02 16:34

堀篤(ほり・あつし)
ジャパン・ストック・トレード特別アドバイザー
日本マネジコ代表取締役社長

1【プロフィール】
1985年、野村證券入社。同社で営業、商品開発、IPOコンサルティング、M&Aコンサルティングなどに従事。同社退職後、タカラトミー、インデックスの役員としてIR、M&Aを推進。2007年に日本マネジコを設立し、ファイナンスアドバイス、投資家向けコンテンツ制作などを展開。著書に「YAHOO! ファイナンス公式ガイドブック」「お金の学校」など、監修に「ウォール街があなたに知られたくないこと」「投資 4つの黄金側」などがある。日本証券アナリスト協会会員。2014年よりジャパン・ストック・トレードの特別アドバイザーに就任。
 

 15年ぶりの高値更新、27年ぶりの長期上昇、過去最高の時価総額…。ここにきて、景気の良い発表が相次ぐ日本市場だが、とは言え、その主体となるのは依然として海外の投資家で、個人投資家のマインドに熱気を感じることはない。むしろ、多くの投資家は、この上場相場に乗るべきかどうか、思い悩んでいる状態なのではないだろうか。
 そんな不思議な静けさを感じる上昇相場の中で、今後、私たち個人投資家は、どのような心構えで投資を行っていけばいいのか。本インタビューでは、個人投資家、証券会社、上場企業経営者の3つの視点から相場を分析し、積極的な投資アドバイスを展開する堀篤さんに話しを伺った。

 

━━ジャパン・ストック・トレードの特別アドバイザーとして、株式投資に関する情報を積極的に発信されている堀さんですが、改めてこれまでのご自身のキャリアについてお話しください。

 1985年に野村證券に入社し、営業を皮切りに商品開発やIPO、M&Aなどの業務を担当しました。ご存知の通り、当時の証券業界はバブル前後の激動の時代で、この間は本当に色々なことがありましたね。
 91年の証券不祥事では、会社が大粛清の嵐に見舞われ、そのあおりを受けて北海道の旭川支店に飛ばされて、4年半をそこで過ごすという経験もしました。でも、そのお蔭で時間的な余裕ができ、じっくりと株の勉強をすることができた、という副産物もありました。当時の証券営業の世界は、ノルマ至上主義で、正直、株の知識を得る余裕なんてほとんどありませんでしたから。上司からは「株の勉強をする暇があったら顧客を落とすために心理学の勉強をしろ」などと言われていたくらいです(笑)。
 そうしてデリバティブやM&Aなどの知識を習得し、退職前に勤務していた名古屋支店では、商品企画やIPOなどの実務経験も積むことができました。


━━1998年に独立され、会社を設立されたそうですね。

 退職後、日本に導入されたばかりのISO認証取得のコンサルティング業務を手掛ける会社を設立して活動したのです。紆余曲折あって、その会社は落合正美さんが創業したインデックスに売却したのですが、私自身も取締役として合流し、IPOやIR業務を担当しました。その後、玩具メーカー大手のタカラ買収に携わり、同社の取締役としてタカラとトミーの経営統合を実現させ、2007年に退職し、現在の日本マネジコを設立した、という流れです。
 これまで証券会社の立場からしか市場を見ていませんでしたが、この間は上場企業の経営者の立場から証券市場を見ることになった訳で、多角的な視点を養うための得難い経験ができたと思いますね。

━━株を売る立場、発行する立場とご経験され、残るは買う立場ですね。

 日本マネジコでは、ISOなどの研修やIRサービス、企業のファイナンスへのコンサルティングを主に展開しているのですが、併せて、2007年からは個人投資家として上場企業への直接投資も始めました。でも個人投資家の立場となると、これまでとはまるで違うんですね。証券業界の内情は良く分かっているつもりでしたから、人よりはうまくできるつもりでしたが、そんなことは無い。かえって、知らなくてもいいような余計な話も耳に入ってきてしまうから冷静な判断ができない(笑)。
 そこで、余計な情報に惑わされないように、一から株式投資のスタイルについて勉強し直し、投資のスキルを磨き、自分なりの必勝パターンを確立して成果を残せるようになった、というのが実際なんです。

━━堀さんは毎週、「週足十字線」銘柄を発表していますが、これなども必勝パターンへのヒントという意味があるんでしょうか。

 そうですね。多くの個人投資家の方々は、株式投資というとまず、個別銘柄を探そうとします。もちろん、これは間違いではないのですが、その前に自分がどのような投資スタンスを望んでいるのかを明確にすることが大切だと思うんです。
 長期に渡って株式を保有し続けるのか、それとも比較的短い期間でてっとり早く儲けたいのか。そのスタンスによって、銘柄の選び方、つまり必勝パターンも異なります。
 チャート上で「十字線」を示す場合は、売り買いが拮抗している状態を示していますから、今後、相場が大きく動く可能性が高い。私が毎週発表している「週足十字線」銘柄は、下落中の銘柄の反発を狙ったもので、日足より週足の方が確率が高いと言われています。1週間から1か月といったレンジで投資するには、誰にでも理解しやすい、最適の指標の一つだと考えています。
 実際、最近の結果を見ても、ここで抽出した銘柄を保有すれば平均で30%ぐらいの利益が出ているのではないかと思います。株式投資をするのなら、やみくもに個別銘柄を探そうとするのではなく、自分の投資スタンスを明確にして、必勝パターンをつくっていただきたい。その分かりやすい一例として、あえてこの指標を使い、皆さんにお伝えしているという訳です。


━━では、より長期の視点で投資をしたいという方々には、どのようなアドバイスをされますか。

2 自分なりの投資スタンスを持っていれば、あとはゆっくりお宝探しをすればいい。私は現在、アナリストの視点で、将来、成長が期待できる銘柄を発掘して、皆さんにお届けするように心掛けていますが、その中ではセキュリティー関連の企業に注目しています。
 というのも、この分野では日本企業の技術力は世界的にも浮上に高く評価されていて、財務体質もよい企業が多く揃っているからなんです。国際的な技術の優位性という点では、いま何かと話題を呼んでいるドローンもそうですね。もっと広く言えば、航空・宇宙分野です。この両分野は、中国の台頭などによって今後、大きく成長するだろう防衛産業の中心的存在でもあります。
 他にも、インバウンドやTPPなど、有望ジャンルはいくつか挙げられますが、視点を変えて、銘柄を選ぶ着眼点としてお勧めしたいのは、「アジア人の受けが良い」会社。こうした会社は今後、長期的に成長するだろうと考えています。

━━なるほど。ところで、堀さんは現在の市況についてはどうお考えになっていますか?これまでになく、非常に静かな好相場が続いていますが。

 そもそも現在のアベノミクスは外圧から始まったもの。その中で、海外の投資家が日本企業に求めていることはROEを重視せよ、ということに尽きます。「スチュワードシップ・コード」の導入もその一環でしょうし、上場企業の立場に立てば、今後、ますますその姿勢を強めていかなければなりません。
 そう考えれば、海外の投資家から見て、日本株が有力な投資対象であるという状況は、しばらくは変わらないと思います。少なくとも9月の中間決算の進捗状況が見えてくるまで、つまり夏場までに下落局面に転じることはないのではないかと。
 ただし、気を付けなければいけないのは、海外の投資家たちが、「日本企業に現在の株価に見合う実力が無い」と判断した時なんです。円安進行による企業業績の好調、GPIF始めとした公的機関の市場参入など、確かに環境は整っていますが、そうした政策の効力が通じなくなる局面が、いつか訪れる。冷静に考えてみれば、最近の日経平均の上昇も、海外の投資家がデリバティブ取引のヘッジとして買われているに過ぎない。グローバル・マネーは世界中の市場を観察し、どこの市場が割高で、どこの市場が出遅れているのかを常に探していて、売りに回ったら早いですから。

━━そうした中、個人投資家としては、どのような心構えで投資をすればよいのでしょうか?

 株価が上昇しているから、政策の後押しがあるから、という理由だけで目をつぶって買いに行くことは絶対に避けるべきでしょう。先ほど、夏場は下げないのではないかという話をしましたが、怖いのはこの時期に、株価が予想以上の上昇を続けてしまうことなんです。本来、大きな材料もないはずなのに、株価が企業の実力とは関係なく上がってしまう場合です。
 そうなれば秋に暴落、ということも有り得るのではないかと。そして、これまで何度も繰り返されてきたことですが、その場合に大きな損失を被るのは個人投資家なんです。
 そうしたことを避けるためにも、繰り返しになりますが、まずは自分の投資スタンスを明確にしていただきたい。短期なのか長期なのか、逆張りなのか順張りなのか。それによって、投資手法もおのずと変わってきます。
 最近セミナーなどでベテランの投資家の皆さんから「チャート分析の仕方を教えて欲しい」という質問を良く受けるようになりましたが、私は非常に良い傾向ではないかと思います。「週足十字線」はほんの一例ですが、投資成功の確率を高めるチャート分析の手法を学ぶことは、相場の動向に振り回されない、自分なりの投資スタンスを確立する第一歩になるはずですからね。

《編集後記》
 数々の執筆活動やセミナー講師歴を見てもわかる通り、分かりやすいオピニオンが多くの投資家の心を捉えている堀篤氏。常に笑顔を絶やさない温厚な語り口は、写真で見る好印象そのままだ。そんな堀さんに、バブル前後の激烈な証券会社営業の荒波をくぐってきたという経験があることは少々驚きだった。
 営業マン時代には株の勉強をしなかったと謙遜するが、後に習得する知識とともに、株式相場の最前線にいたからこそ分かる皮膚感覚のようなものが、現在の堀さんのオピニオンの背景にあるのではないかとも感じた。
 印象深かったのは、秋に相場が急落する危険性を端的にお話しいただいたことと、そうしたリスクを回避するためにも、相場動向に振り回されることなく、個人投資家それぞれが自分なりの投資スタンスを明確にすべきとの言葉。そうしたお話しを聞けば、“一投資家”として、毎週、堀さんが発表する「週足十字線」銘柄情報の受け取り方も分かってきたような気がする。

(みんかぶ編集部)

 

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配信元: みんかぶ株式コラム